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2024年5月

2024年5月 2日 (木)

入江に真っ直ぐ見つめられ

入江に真っ直ぐ見つめられ,三津は泣きそうになった。それから口をへの字に曲げながら頷いた。

 

 

「私はもう必要ない?」

 

 

「その言い方狡い……。でも私はこれから小五郎さんだけを必要とします……。だから……傍に居てくれなくて大丈夫です……。」

 

 

三津は涙をぽろぽろ溢しながらそう言った。入江は直感で嘘だと思った。言いたくないのに言わされてる。だから苦しくて泣くのだと思った。

ここで問い詰めるような真似をしても駄目だ。入江は腑に落ちないが納得したフリをした。

 

 

「そう……。分かった帰ろう。これからは距離感気をつける。三津が決めたんやけぇ受け止めんとな。」

 

 

入江は困惑しながらも笑みを浮かべた。それを見た三津は小さく頷くだけだった。

 

 

屯所に戻った三津はいつも通りだった。ろくな事をしない高杉と山縣を叱りつけ,隊士に嫁ちゃん嫁ちゃんと呼ばれれば笑顔で対応する。

入江は遠巻きにそんな三津を眺めていた。

 

 

『あの女将三津に何言ったんや。』

 

 

間違いなく三津の発言の原因はあの女将だ。女将の胡散臭い笑顔を思い出すと腹立たしいし苛々する。

 

 

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入江は寝る前にもう一度三津の本心を確かめようと部屋を訪れた。

 

 

「三津,お願いやけぇ本当の事話して。三津の本当の気持ち教えて。」

 

 

「あの時話したのが本心です……。九一さんには甘え過ぎてました。今までホンマにごめんなさい。九一さんにはもっとお似合いの人がいますからその人に尽して下さい。」もし本当に三津が決意したんだとしたら,こんな終わらせ方はしない。

 

 

「だから女将が何か言ったんやろ。」

 

 

「女将の話を聞いて気付いたんです。私は女将と小五郎さんの関係を疑って嫉妬して,私は小五郎さんを好きなんやなって。

それやのに出立するあの人にきつく当たって妻失格やって。せやからこれからは心入れ替えてあの人に尽くすの。」

 

 

三津はこれは私の答えだと矢継ぎ早に話した。今度こそ気持ちは変わらないと。

 

 

「そう……しつこくてごめん。」

 

 

入江は三津の両肩から手を引いて,三津の目を見る事なく部屋を出た。

 

 

『何があったか分からんがあの答え出されたら私は身を引くしかないやんか……。』

 

 

でも納得がいかない。三津のあの話し方,嘘をついている。

それともこれは選ばれなかった故の負け惜しみだろうか。

 

 

次の日入江は早くから出掛けた。女将と話して確かめないと気が済まない。入江は暖簾を出す女将を捕まえた。

 

 

「昨日は私の分までお菓子をありがとうございます。」

 

 

「入江様!こんな早くにわざわざそれを?」

 

 

女将は驚くと同時に喜びを顕にした。だが入江にはそれが白々しく見えて気に食わなかった。

 

 

「それはもう早くお礼を貴女に伝えたくて。

それと三津に何を言ったのか。聞かないと気が済まなくて。」

 

 

三津の名を聞いて女将はあからさまに顔を顰めた。

 

 

「昨日は聞き苦しい私の身の上話を……。松子様が悩んでいらしたので私の経験を話した上で貴方様は幸せだと慰めたつもりだったのですけど……。」

 

 

女将はまた余計な事をしてしまったのねと落ち込む素振りを見せた。

 

 

「本当の事を教えていただきたい。」

 

 

入江はそんな演技はいらないと女将に詰め寄った。

 

 

「私は松子様が如何に恵まれているかを教えて差し上げただけです。

あの方はお優しいから夫がある身だけれど入江様の気持ちも無碍に出来ないと悩んでおられました。

だから妻ならば夫に献身であるべきと助言したまでです。それをどう受け止められたかは松子様次第です。

松子様は自分が周りからどういう目で見られるかを気にしておられました。その松子様のお気持ちが分かります?」

 

 

女将の言葉を鵜呑みにしてはいけないと分かっていたが入江は押し黙った。

自分達で話し合ってこの関係を作った。普通じゃないのは百も承知。

だが,いくら自分と桂が周りに何と言われても平気だと豪語したって板挟みの三津はそうじゃない。

 

 

『本当に三津は私から離れる決意をしたのか……。』

 

 

だとしたら最近の三津の行動にも納得がいく。本当に自ら距離を取っている。

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