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2024年4月

2024年4月 1日 (月)

「これ吉田さんの脇差です。

「これ吉田さんの脇差です。ここまで守っていただきました。」

 

 

すっとフサの前に差し出すとフサは愛おしそうな目をしてそっと手に取った。

 

 

「お帰りなさいませ兄上。ようやく三津さんを連れて来てくれたんですね。それにしっかりとお守りになって……立派でございます……。」

 

 

その目にうっすら涙を浮かべながら微笑んで脇差を三津に返した。

 

 

「あのこれはフサさんが持っているべきでは……。」

 

 

フサのたった一人の兄の遺品だ。吉田は家族の元に帰るべきだ。

三津はそう思ったがフサは首を横に振った。顯赫植髮

 

 

「兄上はまだ最愛の方を守る任務の途中です。最後まで全うさせてやってはいただけませんか。」

 

 

そう言って微笑むフサに三津の涙腺が崩壊した。

 

 

「その顔吉田さんそっくり……。最期に……私に向かって見せた顔と……そっくり……。」

 

 

「あぁ似ちょるなぁ。フサちゃんと稔麿。似ちょるわ。」

 

 

「そうですか?ありがとうございます。兄上は私の誇りです。この上ない褒め言葉です。

三津さん,これからも兄上をよろしくお願いいたしますね。」

 

 

三津は泣きじゃくって頷くしか出来なかった。齢十四,五の子に宥められるなど情けないなと思ったがそれでも涙は止まらなかった。

 

 

「三津さん泣くと体力使ってお腹空くけぇ何か甘い物でも食べに行かん?良かったらフサちゃんも。」

 

 

「いいですねぇお供します!」

 

 

「ほら!三津さん行きましょう!!」

 

 

文とフサは三津の両脇を陣取って町へ繰り出した。

 

 

『どこに行っても女って強い……。』

 

 

今は余計な事は言うまいするまいと入江は三人の後を静かについて歩いた。

だがそれを文が許す訳もなく町を散策しながらちょいちょい昔の掘り返されたくない話を放り込んできた。

 

 

『玄瑞……見てるか?お前の嫁は元気やぞ……。』

 

 

入江の魂は抜け落ちる寸前だった。甘味を食べ町を散策しているところで三津は露店の焼物に目がいった。

 

 

「あ……急須……。」

 

 

ポロッと呟いた一言に文とフサが瞬時に反応した。

 

 

「三津さん急須欲しいそ?」

 

 

「姉上,萩は焼物が有名です!」

 

 

『フサちゃんちゃっかり三津さんを姉上と……。』

 

 

二人が壁になってるが故に近寄れない入江は背後から店に並ぶ焼物を覗き混んだ。

 

 

「屯所で急須を割ってね,それを買いに行くって言って私がここまで連れ去っとるそ。」

 

 

「その急須割ったのにも理由がありそうね。」

 

 

「文さん心が読めるんです?」

 

 

にやりと笑う文に三津のぽかんとした。この鋭さはサヤをも凌駕すると尊敬の眼差しを向けた。

 

 

「ここに来る理由になった桂さんの悪事を聞いて動揺して落としたほっちゃ。

だって考えてみ?追手から逃れて体制立て直す為って自分の元を離れた恋仲がいくら逃げ延びる為とは言え女一人孕ませて別の女とは偽装でも結婚しちょったんよ?」

 

 

入江によって明らかにされた逃避行の詳細に文とフサは呆然としていた。それから文は額に手を当て盛大に溜息をついた。

 

 

「やけぇ桂様に反省させるって事なんね。はぁー!本当に男って奴は!どうせ迫って来た女に恥かかせちゃいけんとか都合のいい理由つけとんやろ。」

 

 

文の怒りっぷりに三津がおどおどしだした。するとすかさずフサが三津の左側にぴったり寄り添って手を取った。

 

 

「姉上大丈夫です。私達は姉上の味方です。」

 

 

「うちの主人もここらじゃ美男子やって持て囃されて女食い放題やったけぇ色んな悪事知っちょるけど何で男は成長せんかねぇ?」

 

 

『兄上そうやったんや……。』

 

 

あんまり聞きたくなかったなそれと苦笑いする三津の後ろで入江もまた苦笑した。成長しない男に括られてしまった。

 

 

「それに逃げ延びる為?そんなん言うたら三津さんが何も言えんの分かっちょって言っとるそ?卑怯やわ。」

 

 

文の怒りは留まる所を知らず,当人の三津を置いてけぼりにした。

 

 

「姉上はいつまで萩におられるのです?もう桂様の元に戻るのが嫌ならここで暮らしてはいかがでしょうか?」

 

 

フサの提案にぽんと手を打って文が閃いたと目を輝かせた。

 

 

「文ちゃん私は嫌な予感しかせんのやけど。」

 

 

一体何を思いついたんだと入江は苦笑しながら首を傾げた。

 

 

「入江さんいつまでに戻らないけんとか期限はあるそ?」

 

 

「いや,思いつきで来たけぇしばらく空けるとしか。」

 

 

それを聞いて文はにんまり笑った。

「何やそれ……。

「何やそれ……。そこまで勝手に見越すなや……。これも全部アイツの作戦の内かいや。」

 

 

入江は熱くなった目を手で覆って肩を揺らした。それから文の視線は三津へ移った。

 

 

「三津さん。主人はいい兄でしたか?」

 

 

文に穏やかに微笑まれて三津も目にいっぱい涙を溜めて頷いた。【脫髮】頭髮稀疏是脫髮先兆?醫生推薦生髮方法大揭秘! @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::

 

 

「一緒に過ごせた時間は凄く短かったですけど,とても良くしてくれて……いい兄上でした……。」

 

 

どれだけ言葉を並べてもそれは語り尽くせない。三津にとって最愛のたった一人の兄だった。

 

 

「それは良かった。主人もそれを聞いて安心してると思います。それで……三津さんとの二人旅をよく桂様が許しましたね?」

 

 

涙していた二人の肩が最後の一言にギクッと跳ねた。

 

 

「あら?もしかしてワケ有り?」

 

 

「文ちゃんには敵わん……。今はちょっと桂さん反省さす為に勝手に連れ出したそ。」

 

 

入江は手の甲で乱暴に目を擦ってから苦笑いで文を見た。そして文は久坂から一体どこまで知らされてるのだろうと思った。

 

 

「ちなみに入江さんは今日はご実家に?」

 

 

「いや帰らん。今回の目的は三津さんを萩に連れてくる事やけぇ。本来なら稔麿が連れてくると約束しちょったんやけど。」

 

 

「あぁそうでしたか。では今日はどこか宿に?それならうちに泊まりません?部屋空いちょるし三津さんとお話したいけぇ。」

 

 

文の人懐こい笑みに三津はどうしましょうと入江を見た。

 

 

「急に来たのにええんか?ここに泊まらせてもらえるなら有り難いけど。」

 

 

「はい,決まり!んふふっ三津さんから見たこの人らの話聞きたかったそ。男共は絶対何も喋ってくれんけぇ。」

 

 

にんまりと笑う文に入江はずっと苦笑いのままだった。三津には何となく力関係が見えた気がした。

 

 

「それはそうと文ちゃんはフサちゃんと付き合いあるか?」

 

 

あまり追求されたくない入江は咄嗟に話をすり替えた。一応フサについても今回の旅の目的でもある。

 

 

「フサちゃん?あるよ今朝も会ったとこや。」

 

 

「良かった。後でフサちゃんとこついて来てくれん?多分フサちゃん私の事覚えちょらんやろうから。」

 

 

「そしたらちょっと休憩したら三津さんに町案内するついでに行きましょ。三津さんをフサちゃんに紹介するん?」

 

 

「そうそう,お前の兄が惚れた女やでって。」

 

 

「ちょっと!」

 

 

三津は思い切り入江の背中を叩いた。もっとマシな紹介の仕方があるだろうが。

 

 

「それが不満なら私の嫁……。」

 

 

最後まで言う前に入江の頬をつねり上げた。それを見た文は声を上げて笑った。

 

 

「入江さんにそんな事する子初めて見た!ますます好きになるわ三津さん。」

 

 

満面の笑みを向けられた三津はそっと手を離して恥ずかしさのあまり俯いた。

 

 

「あっ気にせんでええんよ?入江さん痛いの好きやから。知ってる?」

 

 

「文ちゃん!」

 

 

入江が余計な事は言うなと視線を送るが文は何の事?と言わんばかりに首を傾げた。

 

 

「本当にうちの人と言い高杉さんに入江さんに吉田さん四人揃うとろくでもない。

兄上は優秀生四人やって評価しちょったけどただの助平な子供やったし。」

 

 

「助平な子供っ。」

 

 

三津はぷっと吹き出し慌てて手で口を覆ったがそれを横目で入江に睨まれた。

 

 

「本当の事やないですか。四人とも私を女とも思ってないんか知らんけどずーっと目の前で下世話な話聞かされてたんよ?

やけぇ四人の好みも性癖も無駄に覚えちょるわ。」

 

 

「あー奇兵隊の屯所に来てから私の前でもずっと下世話な話ばっかでした……。危うくこの人のご本尊拝まされるとこでしたし……。全然成長してないんですね。」

 

 

「三津さんの前でもそんなんしよるそ?呆れたぁ!」

 

 

文が大袈裟に言ってのけると入江は背中を丸めて小さくなった。

 

 

「それは……三津さんがいちいち可愛い反応するけぇ……。」

 

 

「あーはいはい好きな子苛めたくなるあれね。苛めたら嫌われるだけやけぇ覚えちょき。」

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