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2023年11月 3日 (金)

が助かった。

が助かった。これほどすごいことはない」

 

 

 いつの間にか、二人で最後尾についていた。

 

 これだと副長が目立ちやしないかと危惧したが、連帽衛衣 

先頭には島田がそれっぽく「梅ちゃん」をあゆませている。

 

 もしもスナイパーなり刺客なりがいるとしても、先頭の士官を狙うはずである。

 

 それに、万が一副長が狙撃されるようなことがあれば、おれが身をていして副長にかわって撃たれればいいだけのことである。 とはいえ、はたしてこのおれが馬上の副長を身をていして護れるのだろうか?

 

 ぶっちゃけ、身代わりにどう撃たれればいいのかなんて、まったくわからない。さらには、副長が敵のスナイパー等に狙われていることに気付くことができるかどうか……。それも、誠に疑わしい。

 

 結局、おれにはなにもできない可能性が高い、という結論にいたった。

 

 ということは、副長が撃たれて「竹殿」から転がり落ちるのを、なす術もなく見守るしかないわけである。

 

 あっせめて、「副長っ」とか「スナイパーだっ」とかくらいは叫ぶことはしよう。

 

「てめぇっ、おれが撃たれてもただみているだけか、ええっ?」

 

 馬上から、副長に怒鳴られてしまった。

 

「だって、どうしようもありません」

「この野郎っ!すこしはいいところをみせやがれ。いちはやく気がついて飛び上がっておれの盾になるとか、狙撃手までの射程上に飛びだして邪魔をするとか、いくらでも護る方法はあるだろうが」

「そんな馬鹿な。おれにそんなことができるのでしたら、副長はとっくの昔に『主計様、どうぞわたしにあなたの軍靴をなめさせてください。ピッカピカにいたします』といって、おれを崇め讃えているはずです」

「はっ!きいたか、「竹殿」?馬鹿なってのは、おれがいいたいよ」

「ブルルルル」

 

 副長が「竹殿」に同意を求めると、出来たお馬さんである「竹殿」は、鼻を鳴らしてどっちつかずの返事をした。

 

 ってかこのやりとり、めっちゃビミョーなんですけど……。

 

 あと二週間も経たないうちに、副長はいままさしく話をしている状況そのもので、腹部を撃たれて落馬してしまう。

 

 そして、死ぬのである。

 

 二人でジョークをいい合っているけど、おれの内心は穏やかではない。

 

 一瞬、『その通りにしますから、ぜったいに死なないでください』って口からでそうになった。

 

 が、実際にはでなかった。

 

 やはり、怖い。

 

 おれがそういったときの副長のリアクションが怖いのである。

 

 そんなこと、おちゃらけてとか笑いながらなんてとてもではないがいえないだろう。マジなで、しかも追い詰められている感満載でいってしまうはずである。

 

「……」

 

 しまった……。

 

 いつの間にか「竹殿」の歩みが止まり、おれも立ち止まっていた。

 

 副長が無言でみおろしている。

 

 おれの心の中、だだもれだよな?

 

「ぽちは、誠になにもないと思うか?」

 

 しばらくの間、副長のと沈黙にドキドキしながら耐えていると、意外にもまったくちがうことを質問してきた。

 

 副長がいまのだだもれに触れなかったのは、故意である。

 

 触れたくないにちがいない。

 

 ホッとすると同時に、副長が触れられたくない理由を知りたいとも思う。

 

「たまの様子から、なにもないことはないと思います。ぽちも、どことなく無理をしているっぽい気がします」

「くそっ!ぽちは、満身創痍じゃねぇか」

「ええ……」

 

 たしかに、俊春はもともとが頑丈かもしれない。だが、あんな華奢な体であれだけ傷を負い、体力をつかいまくっている。しかも、不眠不休にちかい。

 

 いま、かれが生きて眼前に存在しているということじたい、神の奇蹟に思えてくる。

 

 

 それからは、とくに副長と会話はなかった。

 

 それぞれが俊春のことをかんがえたり、それ以外のことで物思いにふけってしまった。

 

 そして、有川のすぐ近くまでやってきた。

 

 味方の諸隊が、息をひそめるようにして参集している。

 

 今回は、副長はいっさい口をさしはさまない、はずである。

 

 とりあえず、中島と俊冬と俊春、それから彰義隊や額兵隊、伝習隊、衝鋒隊、といったまだ戦える状態の士官たちが集まり、打ち合わせをおこなっている。

 

「副長」

 

 副長やおれたちは、中島や士官たちから離れた場所に立っている。

 

 すくなくとも、おれたちは控えめに立っているつもりである。

 

 が、どこかの目立ちたがり屋さんはちがう。

 

 ムダにカッコつけているものだから、それでなくっても目立つイケメンが、よりいっそう目立ってしまっている。

 

 ここまで目立ちまくっていたら、中島も声をかけざるをえない。

 

 彰義隊など諸隊の士官たちも、わいてでてきた陸軍奉行並を無視するわけにはいかない。

 

 彼らは、この場にいる一番偉い上司にたいして礼をとっている。

 

「仕方がないなぁ」

 

 中島は気を遣って声をかけただけなのに、どこかの勘違い野郎はでかい態度で中島らのもとにあるきだそうとして……。

 

「いたっ!」

 

 グーパンチが頭に飛んできた。すんでのところで頭をひいてかわそうとしたが、右側頭部をかすってしまった。

 

「副長、なにをするんですか。みましたか、みなさん?いまのがこの人の本性です。イケメンにだまされてはいけません。ちょっとカッコいいからってなんでも許されると、大いなる勘違いをしているのです。だから、みなさんも気をつけてください」

 

 ここには大勢の部外者、新撰組にとってはという意味であるが、兎に角イケメンの誠の姿を知らない人が大勢いる。

 

 いい機会である。よーっく知っておいてもらわないと。

 

 というわけで、たったいまおれが副長からパワハラを受けたところを目撃した士官たちに訴えてみた。

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