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2023年8月

2023年8月24日 (木)

と、一頭の四つ脚の動物の

と、一頭の四つ脚の動物の影が、浮かび上がっている。

 

 それをみつめつつ、そう決意した。

 それから、野村と俊春とともに、子宮腺肌症懷孕 

影へと向かってダッシュした。

 

「おまえら・・・・・・」

 

 農夫の恰好をしている二人のうちの一人が、ごつい腕を伸ばしてきた。永倉である。かれは、こちらが身構える暇をあたえるはずもない。右腕は野村の頸に、左腕はおれの頸に、それぞれ腕をまわしてぐいぐいしめつけてきた。

 

 日数にすれば、一か月半くらいである。それでも、この一か月半は精神的にハードであった。頸に絡む永倉の筋肉質の腕、それから馬鹿力があまりにも懐かしくて、涙がでてしまう。

 

 野村も感極まってる様子で、頸をしめられている。

 

 涙にぬれるを原田へ向けると、かれは俊春のまえに立ち、両腕を伸ばしかけている。

 

 俊春の身が、いろんな意味で危険なのでは?、とはらはらしてしまう。

 

 俊春の身にふりかかる不幸は、なにも怪我や病気、不慮の事故だけではない。貞操を奪われるようなことになれば、兄貴に殺されて、いや、おなじ目にあわされるかもしれない。

 

 永倉もそれに気がついたらしい。かれの動きがとまった。それでやっと、ごつい腕から解放された。

 

 野村もふくめ、原田がどうでるかうかがってしまう。

 

「よくやった」

 

 原田はそれだけいい、俊春をハグした。ならなおさらだ。

 

 ほほえましいハグは、ってか、ハグにしちゃぁずいぶんと長すぎないか?

 フツー、ハグってのは挨拶だから、長くても数十秒って単位じゃないのか?

 

 ってか、まだハグやってる。さすがに数分って単位になると、ハグっていわないんじゃないのか?

 抱きしめてるっていう、表現になるのではなかろうか?

 

 ってか、もはやセクハラじゃないのか?

 

 刹那、俊春の体が硬直したように感じられたのは、気のせいだろう。

 まぁ、あらゆる意味でヤバい原田にハグされたら、だれだって不安になるだろう。女性なら兎も角、 小柄な俊春は、大柄な原田にハグされてその背にすっぽりと隠れてしまっている。だが、かれの両腕がのびているのがみえる。

 

 原田にハグをし返そうかどうか、躊躇しているっぽい。

 

 俊春・・・・・・。

 ちょっとかわいいかも。

 

「いいかげんにしねぇか、左之。そんなに抱きしめたら、俊春が死んじまうだろうが、ええ?」

 

 おおっと。副長の雷が、原田に直撃した。

 

「おれだけじゃない。俊冬の分までやってるんだ」

 

 原田は、あいかわらずである。副長の雷もどこ吹く風だ。

 

 ってか、懲りずにまだハグやってる。

 

「よし、堪能した」

 

 それから数十秒後、原田はやっと俊春を解放した。

 原田は満足そうだが、俊春はくしゃくしゃになってる。

 

「堪能した?」

 

 永倉と野村とでハモッてしまう。

 

「おっと、忘れていた。ぽち、さっき『よくやった』っていうのは、俊冬からの言伝だ」

 

 原田よ・・・・・・。

 ハグに夢中のあまり、肝心なことを忘れるなんて。

 

「ということは副長、俊冬殿に会ったんですね?」

 

 うしろに立つ副長に体ごと向き直ってから、副長が怪我をしていることにはじめて気がついた。

 

 草履をはく左足に、包帯がこれみよがしに巻かれている。

 

「ええ?脚、負傷したんですか?」

 

 あれだけ負傷するって話をしたのに、気をつけなかったのだろうか?

 だとすれば、ドンくさすぎやしないか?

 

「なんだと、主計?」

「あっい、いえ。ドンくっさいなんて思ってもいませんから」

「って、思ってんじゃねぇか」

「す、すすすみません」

 

 一応、めっちゃごめんなさいを口と体とで表現する。

 

「間者に襲われたんだよ」

「ええっ?」

 

 驚いたのは、島田と俊春以外である。

 

「参謀付きの従者ってんで配属されてきたやつが、間者兼刺客だったってわけだ。戦の最中、おれと秋月殿の位置を敵にしらせてやがった。どうりで、本陣にばっか大砲の玉がわんさか落ちてくるって思ってたんだ。まっ、それは兎も角、かような状況下でも、このおれの策略と采配で宇都宮城を落としたがな。でっその途中、間者が襲ってきやがった」

「もしかして、その従者に脚を撃たれたか斬られたかしたんですか?それで副長は、その従者を斬ったんですか」

「ああ?わかってたからよ。撃たれも斬られるもするんか。おれの最高最強の奥義を喰らわしてやったんだ。そうしたらよ、間者の野郎、よろよろふらふらとふらつきやがってな。そこに、兼定が吠え立て尻をがぶってやったら、野郎、飛び上がって逃げだした。そこへ、うまいぐあいに敵の抜刀隊が突っ込んできて、野郎は斬られちまった。ああ、そうか。野郎にとっちゃぁ、敵じゃなく、味方に殺られたってことになるな」

「最高最強の奥義?」

 

 永倉と原田、野村と利三郎とともに、つぶやいてしまった。

 おれもふくめ全員、めっちゃ不信感もあらわな声音である。

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