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2023年6月

2023年6月12日 (月)

も、ビミョーなものになっ

も、ビミョーなものになったであろう。

 

 さすがに、俊春への「落としてみろ」宣言は、室内だったのでみえないし、きこえなかったらしい。

 

「おまえらも、は、これまでおまえたちがやっ 肺線癌檢查

てきたところとはちがう。おまえらが媚と体躯をうり、なにかを得たり与えられても、だれ一人喜びやしない」

 

 涙を流してはいないものの、原田の涙声の叫びは、だれの心にも響いているだろう。

 

 副長は、拳を握りしめたままうつむき、永倉は、を床に落とし、肩で息をしている。その永倉の肩に掌を置く斎藤も、を伏せている。

 

 弟を抱く俊冬の華奢な体は、ちいさく震えている。

 

 そして、兄に抱きしめられている俊春。過去にあったことに震え、怯えきっている。

 

 

 双子は、なにかを暴力でえたり成し遂げるよりも、手段としてわが身をうることをよしとしている。

 

 おそらく、過去にあった教訓から、それが有効であると学んだのであろう。

 

 考え方の相違である。

 手段としては、暴力だろうが身をうろうが、どちらもいただけぬ。ゆえに、どちらがいいも悪いもない。

 

 この騒ぎの後も、双子は自分たちのやり方を、控えはしてもやめることはないだろう。かえれば、おのずと暴力で をつけねばならない。

 

 この揉め事が、またいつか問題視されるかもしれない。そのときには、今回、とめた原田はいないだろう。そして、怒りのあまり暴力にはしった永倉も・・・。

 

 結局、暗黙の了解で、このことは局長にはだまっていることになった。

 

 そうしなければならない。局長のため、おれたち自身のため、に。 原田に促され、斎藤とともに双子を厨に連れだした。

 

 俊冬は兎も角、俊春は怯えきっている。それでも、俊冬もふくめ、交代で声をかけ、しばらくのちにはだいぶんと落ち着きを取り戻した。

 

 木箱をもってきて俊冬をその上に座らせ、俊春が洗い桶に水を汲み、手拭で血糊をぬぐってやる。

 

「まったく、新八の馬鹿たれが。ひどいことしやがる」

 

 それを眺めながら、原田がつぶやく。

 

 斎藤が、入ってきた。酒瓶を掌にしている。

 

「せしめてきた」

 

 一言だけ告げ、それを差しだす。

 

 この際、どこから、だれから、という素朴な疑問はおいておくことにする。「あー、相棒、そこでまて。厨にはいったら不衛生、もとい、あまりよくない」

 

 意地悪をするつもりはない。台所に犬を入れるのは、やはり衛生上よくないと思う。

 

 厨の入り口にお座りし、こちらをみている相棒。おれと があうと、眉間に皺がよるほど睨みつけてくる。が、おれ以外の者と があうと、副長ばりの縦皺がなくなる。しかも、尻尾で厨の入り口を掃き清めている。

 

「案ずるよな、兼定。俊冬と俊春が大好きだから」

 

 悪意がないなんていわせない。斎藤が、さわやかな笑みを浮かべ、悪意のない様子で尋ねる。

 

「ちょっ、斎藤先生、それ、どういう意味ですか?」

「言葉どうりであるが、なにか?」

 

 さらにひろがるさわやかな笑み。「悪かった。新八は、頑固だから・・・」

 

 原田が詫びる。

 

 俊春が血のついた手拭を洗い桶につけると、あっという間に真っ赤に染まってしまう。

 

「この洗い桶は、もうつかえぬ」

 

 俊春が、つぶやく。

 

「新八は、よほどおまえらがかわいいらしい。あ、変な意味じゃない。ほっとけないんだ」

 

 そういう原田は、永倉が大好きなのだ。変な意味でなく。

 

「新八は、平助と総司がいなくなって寂しいんだ。だが、ちょうどいいっつたら悪いが、おまえらがいる。俊冬は兎も角、俊春、おまえはおとなしくて、ある意味あぶなっかしいからな。ほっとけないんだ。土方さんだっておんなじだ。土方さんの場合は、ほれ、源さんのこともある。山南さんだって、あ、おまえらはしらんな。兎に角、いなくなったり死んじまった と重ねちまってる・・・」

 

 副長も永倉も、双子を藤堂や沖田とみている。これもまた、心情的にはわかる。原田もまた、同様である。自分がそうみているから、副長や永倉の心情がわかるのである。

 

 これがほかの者だったら、たとえ媚をうろうが身を捧げようが、不快に思ってもここまでの感情のもつれはなかったであろう。

 

 藤堂や沖田がいなくなり、その穴を埋めた双子。性格も

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