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2023年4月

2023年4月29日 (土)

年先とはまったく違う

年先とはまったく違う、内装の城内。

 とはいえ、でかいというわけではない。広さ的には、おそらく、改築した未来のほうが広いはず。

 

 

 大広間に、怪我人が集められ、https://www.fututrustee.com 

寝かされている。

 

 医師だけでなく、も中間や小者も関係なく、バタバタしている。

 

「主計、俊春」

 

 その大広間を通りかかったとき、呼び止められた。

 

 あゆみをとめ、なかをのぞきこむ。

 

 林が、そろそろとちかづいてくる。原田と島田に、両脇から支えられながら・・・。

 

 そのうしろには、永倉と斎藤もいる。

 

 林は、あきらかに具合が悪そうである。

 

 島田らとともに先行していたので、をみていなかった。

 

 ええっ、いったい、いったいなにが?

 

 心臓が高鳴る。

 

 頭のなかが、真っ白である。「林先生っ、いったい、どうされたんです?」

 

 おれだけでなく、俊春も驚いている。

喰らったのを、だまってやがった」

 

 苦々しくいう原田。

 

「いったいどこでなんです?で、大丈夫なんですか?」

 

 林自身は、答える力もないらしい。口角があがりかけたが、あがりきらない。

 

「伏見でだ。は貫通してたが、血がですぎたらしい。くそっ、気づいてやれなかったおれのせいだ」

「馬鹿いえ左之、おまえだけじゃない。だれかのせいだっつうんなら、組長三人のせいだ」

 永倉のやさしさ、である。

 

「山崎さんを、探しにゆくのであろう?」

 斎藤が、手拭いを差しだしてくる。

 

 端のほうに血がついている。が、比較的きれいな手拭い。

 

「山崎が林の汗を拭ってやろうとしたときに、あらたな怪我人が運び込まれたらしい。そのあと、急にいなくなったらしい・・・」

 

 島田の説明。

 おそらく、その運び込まれた怪我人が、の隊士で、動けぬ仲間のことを告げられたにちがいない。

 

「結局、手拭いはつかわんかったので、おまえに渡したい、と。おれが渡してくるといってるのに、この馬鹿、自分で渡したいってききゃしない」

 

 原田は、林の頭を掌ではろうとし、重傷であることを思いだす。

 

 林は、やっと口角をあげる。

 

 林・・・。山崎の捜索にゆく、おれと相棒のために・・・。

 

「主計、俊春、山崎と隊士たちを頼む」

「すまぬ。おれたちもゆきたいところだが・・・」

 

 永倉、斎藤の心からの言葉・・・。

 

「ええ、わかっています、永倉先生、斎藤先生。林先生、ありがとうございます。ありがたくつかわせていただきます。ちゃんと布団をきて、まっていてください」

 

 布団ロスの林の肩を、そっと撫でる。

 

「俊春、兼定は兎も角、正直、主計はなぁってところがある」

「承知しておりますよ、永倉先生」

 

「主計はなぁって・・・。正直すぎませんか、永倉先生?俊春殿も、承知せずとも」

 

 って、突っ込もうと横を向くと、俊春はとっとと廊下をあるいている。

 

 はやっ!ってか、とっととゆくか?

 

「いってきます」

 

「おうっ!まってるからな」

 

 永倉たちにみ送られ、慌てて俊春を追いかける。

か?

 

 いや、リアルにおんなじシチュエーション。

 

 さっきとおんなじところに相棒を繋いでいて、そのまえにまた榎本が胡坐をかいている。

 

 ちがうのは、俊春がいて、相棒の綱を杭からはずしていること。

 

「上様は不在だという。どこにいったのか、老中の馬鹿どもはわからんといいやがる。わざわざ会いにきたってのに、これじゃぁ、おいらのほうが馬鹿だってこったな」

 

 ちかづくと、相棒にか俊春にか、愚痴っている。

 

「しょうがねぇ。

 

「この馬鹿、腹に、出港したらしいですぞ」

 

 俊春が、心底気の毒そうにいう。

 

「なんだって?かような馬鹿なことがあるか」

 はじかれたように「まだ公になっておらぬようなので、ご承知おきいただきたいのですが・・・」

 

 迷ったが、あまりにも気の毒すぎて伝えることにする。

 榎本にちかづき、周囲に人がいないことをたしかめてから、小声で告げる。

 

「上様は、あなたの「開陽丸」で江戸へ。すでに、天保山を出港していると思います」

 

 急に立ち上がるものだから、油ギッシュな頭で頭突きを喰らうところであった。

 

 上半身をのけ反らせ、すんでのところで回避する。

 

「澤のやつは、いってぇなにをやってやがる?」

「上様に命じられれば、従うよりほかありますまい。いかに、艦上では艦長が最一等と申せ、「榎本より、伝言だ」などと申されれば、たとえそれが嘘とわかっていても、逆らえぬでしょう」

 

 俊春の、至極まっとうな推測。

 

 相棒の綱を、かれから受け取る。

 

 榎本の驚愕の表情(かお)を、面白がって見上げている相棒。

 そのまえに、膝をおる。

 

「相棒、任務だ」

 

 マジな表情を心がける。

 林から託されたのち、懐紙で包んでおいた山崎の手拭い。それを、相棒の眼前でひらめかせる。

 

「山崎先生と、鳶さんの捜索をおこなう。複数の

2023年4月18日 (火)

「……分かりました

「……分かりました。して、その内容は?」

 

「ええと、その……なんだ」

 

 土方は首の後ろに手を当て、口ごもる。子宮腺肌症懷孕 

珍しく歯切れが悪いことに桜司郎はますます警戒を強くした。

 

 

 

「俺の、許嫁になってくれねえか」

 

 

 

 それを聞いた瞬間、肩の力が一瞬にして抜け、思わずポカンと口を開ける。瞬きを何回かすると、視線をうろつかせた。

 

 

「えッ、は……!?」

 

 許嫁という単語がぐるぐると頭の中を駆け回る。到底理解できない発言に、これは遠回しにクビを宣告されているのかと判断した。

 

 

「わ……私、何かしましたか!隊から追い出されるようなことでも!?」

 

 高杉や坂本のことがバレたのかと、血の気が引く。狼狽えていると、土方は眉間に皺を寄せて小首を傾げた。

 

 

「何故、俺の許嫁になることが隊から追い出されることになるんだ?」

 

「つまり、出て行けということでは……?」

 

 

 二人の会話はまるで噛み合っていない。この場に原田か沖田が居たら腹を抱えて笑っていることだろう。

 

 

「違ェよ。実はな…………」

 

 そう切り出すと、土方はバツが悪そうな表情を浮かべて話し出した。

 

 土方宛に、幕府より縁談が持ち込まれたという。どうやら、黒の紋付を着こなして颯爽と歩くその姿に、お偉方の娘が惚れてしまったらしい。土方でないと嫁に行かぬと言い張り、しまいには食事すら取らなくなった。しかし土方はあの の副長である。困ったお偉方より、許嫁を連れてくれば娘も納得する、偽造してでも連れてこいとのお達しが来たのだ。

 

 

「……成程。色男も大変ですね」

 

 クビでは無いことにホッとした桜司郎は、他人事のように微笑む。

 

 

「うるせえ。お前……最近総司に言い方が似てきたな。嫌なところばかり教わるんじゃねえよ」

 

「ふふ。……でも、どうしてそれが私なのですか?副長の周りには綺麗どころが沢山居るはずですが」

 

 土方宛にひっきりなしに恋文がやたらと届いていることは、隊士全員が知るところだ。そこから見繕えば良いのではないかと思った。

 

 

「馬鹿、考えてみろよ。俺のことを本気で好いている女にそんなこと頼めるか?……後が怖いだろう」

 

 土方は露骨に嫌な顔をする。鬼の副長にも怖いものがあるのか、と桜司郎は笑いそうになるのを堪えた。

 

 

「それもそうですね。……分かりました。そういうことならお引き受けします。一日だけで宜しいんですよね?」

 

「ああ。助かる。急で悪いんだが、五日後だ。宜しく頼む」

 

 

 それだけ言うと去っていく。

 

 この時、桜司郎は軽い気持ちで引き受けたが、これが後の騒動へ繋がるとは露も考えていなかった 折角だからと桜司郎は化粧を友人である花へ頼むことにした。三年前の祇園祭にて、本当はその予定だったが流れてしまったことを思い出したのである。

 

 丁度、縁談が行われる料亭も八坂に近いため都合が良かった。土方からは好きにして良いとの許可も得ている。

 

 

 久々の女の格好となれば、自然と口角も上がるというものだ。夕餉を摂った後に、隣を歩いていた沖田が怪訝そうに此方を見てくる。

 

 

「何か良いことでもあったのですか?随分と嬉しそうですね」

 

 そのように尋ねられるが、土方からは「この事は俺とお前さんだけの秘密だ。近藤さんにも言っちゃいねえから、そのつもりでな」と口止めをされていた。そのため、小さく首を横に振る。

 

 

「何も有りませんよ」

 

「そうですか。……コホッ、ゴホゴホッ」

 

 沖田は口元を抑えると暫く咳き込んだ。懐から咳止めの飴の包みを取り出すと、一粒口へ放り込む。

 

 その背を桜司郎が優しく擦る。触れた背が細くなっており、ドキリとした。

 

 

「……すみません。もう落ち着きました。困ったな……、飴がもう無くなってしまった。明日にでも買いに行かないと。そうだ……桜司郎さん、ご予定はありますか?」

 

 問い掛けに、桜司郎はハッとする。まさにその明日が土方との約束の日だった。

 

「明日は……その、先約があって……」

 

 

──折角、沖田先生から声を掛けて下さったというのに。

 

 

「そうですか。残念ですが、また御一緒しましょうね」

 

 明らかに落ち込む桜司郎を見て、沖田はくすりと微笑むとその頭を撫でる。

 

 暖かく優しい手付きに、桜司郎は嬉しそうに目を細めた。

2023年4月17日 (月)

「おうのさん!

「おうのさん!こちらへ」

 

 尚も暴れようとする高杉の身体を志真が抑え、その間におうのは桜司郎のいる部屋へ避難してきた。その手には高杉の愛刀が握られている。興奮して抜刀しないようにと持ってきたという。

 

 

 おうのの頬には涙が伝い、事後避孕藥副作用 

その小さな肩は僅かに震えていた。

 

「ご無事ですか。お怪我は?」

 

 桜司郎の問い掛けに、おうのは無理矢理笑みを浮かべると首を振る。

 

「……大丈夫よぉ。ここまで酷いのは初めてやったけえ、驚いただけなんよ。うふふ、心配かけましたねぇ」

 

 精一杯強がるが、尚も身体の震えは止まらなかった。その背を桜司郎がそっと摩る。

 

「……旦那様の方がお辛いんやけえ。うちよりも、病と戦うとる旦那様の方がずっとずっと、ずうっと辛いんや」

 

 

 まるで自分に言い聞かせるように、おうのは呟いた。その健気な姿を見て、桜司郎は切なげに眉根を寄せる。

 

 

「……おうのさん、今夜は私が高杉さんを見るから。少し休んでください」

 

 ところが、その提案にもおうのは良しとしなかった。

 

「有難いですけれど、うちが看ると決めたけえ。大丈夫です」

 

「でも、おうのさんずっと満足に休めていないのでは……」

 

 そこへ高杉を何とか落ち着かせた志真がやってくる。

 

 

「その通りです。これから長いんですけえ、休める時に休んだ方が得策やと思います」

 

 

 志真の一声でおうのは休息を取る事をやっと同意した。入れ替わるように、桜司郎は高杉の部屋へ足を踏み入れる。 桜司郎は昼間の高杉と同様に壁へ寄りかかりながら、苦しげな呼吸を吐きつつ眠る男へ視線を移した。

 

 

 いつの日だったか、医の知識を付けようと山崎と共に南部の診療所を訪れたことがある。そこで、人間とは死期が近くなると、特に夜中に混乱したような言動が見られる可能性があると聞いたことを思い出した。

 

 

──高杉さんは必死に自分と戦っている。

 

 

 今出来ることを精一杯やるのが、せめてものの恩返しだと拳を握った。

 

 高杉が咳込めば背を摩り、その口元に血が付けば拭い、身動ぎをすれば暖かく眠れるように何度も布団をかけ直した。

 

 

 

 やがてそうしているうちに、桜司郎はうとうとと船を漕ぎ始める。かくん、と大きく身体を揺らした拍子にハッとして目を開けた。

 

 薄らと開いた戸の間からは外の色が漏れる。青白い夜明けの色だった。

 

 

 慌てて高杉の方を見やると、穏やかに眠っている。それに安堵していると、隣の部屋へ続く襖が静かに開いた。

 

 おうのが顔を出しており、手招きをしている。それに応じるように立ち上がり、忍び足で近付いた。

 

「……うち、今から神社へお祈りへ行こうと思うんやけど。後、白石様の御屋敷にも行かんといけんのよ。旦那様のこと、お願いしてもええ?」

 

 申し訳なさそうに囁くその言葉に、桜司郎は大きく頷く。

 

「……大丈夫です。危ないので、志真さんに護衛してもらって下さい。高杉さんのことはお任せあれ」

 

 そのように返せば、おうのは薄い笑みを浮かべた。

 

 

 

 高杉の元へ戻り、その横へ座る。少しすると戸が開く音がした。おうの達が出掛けて行ったのだ。

 

 

「ん…………」

 

 その音が聞こえたのか、高杉から声が漏れる。ゆっくりと重たい瞼が開かれていく。

 

 

「風を……、」

 

「風、ですか」

 

「風を、感じたい。戸を……開けてくれ」

 

 部屋の空気が籠っていると言いたいのだろうかと、桜司郎はその通りに戸を開けた。

 

 夜明け独特の澄んだ冷たい風が室内へ取り込まれていく。漆黒の闇のような空は、東の方から徐々に白み始めていた。いつの間にか厚い雲はさっぱり消え去っている。

 

 

 必然的に部屋の中からも闇は取り払われ、人の顔が見えるくらいには明るさを取り戻した。

 

 戸を開けて戻ってきた桜司郎の顔を見るなり、高杉はみるみる顔を強ばらせる。その目は遠い何かを見るように細められた。

 

 

「……おうのすけ」

 

「え…………?」

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