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2020年12月

2020年12月25日 (金)

そこから流れてくる過去を紫音は目を閉じて感じる

そこから流れてくる過去を紫音は目を閉じて感じる。………あぁ、これがこの人の「誠」なんだ。この人はただ不器用なだけ。その光景を見て、紫音は悲しそうな微笑みを浮かべた。す…と手を離された芹沢は、その紫音の表情に魅了された。「…な、何なのだ」「芹沢さん、貴方はそれでいいのですか?」今の芹沢の覚悟が伝わってきた。だからこそ、紫音は問う。芹沢は一瞬面を食らった表情をした後、ニヤリと笑った。「お主は不思議な女子じゃの。これから何が起こるか、全て知っているかのように見える」すると紫音は、左手を出して言った。「貴方がこの手を取るなら、わかりますよ。貴方がいつ死を迎えるのか」「………ほう?」しばらくそのまま、二人の間に沈黙が流れる。芹沢はゆっくりと顔を上げ、手を紫音の手に乗せようとした。が、子宮內膜異位症 すり抜け、紫音の頬を撫でた。驚いた紫音だったが、振り払おうとはしなかった。ごつごつした大きな手。暴君と噂される芹沢の意外にも優しい手だった。「そう辛そうな表情をするな。…慌てずとも時は来る。だから儂は知ろうとは思わんよ。………だが、紫音と言ったな?お主に頼みがある」「頼み?」「あぁ」「…わかりました。必ず叶えましょう」まだ聞いてもないのに、紫音はそう言い切った。頼もしくもあるその言葉に、芹沢はいつぶりか穏やかに笑った…。「面子は俺、山南さん、総司、左之の四人でいく。異論はねぇな?」眼光鋭く、土方は部屋に集まる男たちを見た。ごくり、山南が喉を鳴らす。行くならば自分を入れて欲しいと、懇願したのは自分であるのに、いざこの時になると決意が揺らいだ。「山南さん、無理だったらいぃんだぜ?…安心しろよ、士道不覚悟で切腹なんていわねぇから」土方の冗談混じりの言葉に、山南は拳を握りしめて土方を見た。「何てったって極秘だからな。新見が死んで、続けざまにあんたもなんてさすがにごまかしきか「土方くん」土方の言葉を遮り、山南はいつになく厳しい目で立ち上がる。「そんな風にけしかけなくても大丈夫だよ。

君が鬼になる覚悟を決めたように、私も決めたんだ」「…そうか」ニヤリと笑って、土方は置いてあった差し料を手渡した。「近藤さん、あんたは動くなよ?あんたが入っちゃ組は成り立たねぇ」「………わかった」渋々、といった感じで頷く近藤。満足げに笑うと、黒の羽織りを肩にかけ、土方も立ち上がった。「総司と左之はすでに揚げ屋に奴を連れて行ってる。行こうじゃねぇか。…粛清にな」土方の言葉を皮切りに、三人の男は部屋を後にした。「………今日、か」土方たちが去った部屋に、ぽつりと声がした。屋根裏に潜んでいた、紫音である。新見の慰霊会という名目で、隊士たちは島原の揚げ屋での宴に繰り出していた。そのために今夜の屯所は人気がない。おかげで容易に潜り込めたのだが、紫音は珍しく神妙な顔つきだった。

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宴の最中、厠から帰ってきた土方はキョロキョロと部屋を見渡し、さっきまでと違う事に気付く。「芹沢さんは?」「だいぶ酔うた、とか言って先に帰りましたよ」「そうか」気付かれたか?土方は眉を潜め、永倉の横に座る。ここで急いて他の者に気取られては意味がない。

2020年12月23日 (水)

どうしてこんなことになっているのか

どうしてこんなことになっているのか。男性と一緒にお風呂に入ったことのない私は、この状況に戸惑いと緊張を隠せない。どうにか平常心を保とうと、大人しく彼に洗われているけれど、静かにすればする程、自分の心臓の音が彼にも聞こえてしまいそうだ。久我さんと付き合い始めてから、何度思ったことだろう。もっと、経験値が欲しかった。そうすれば、今頃こんな風にお風呂に一緒に入るだけでドキドキすることなんてなかったはずなのに。「蘭は、背中も綺麗だよね」「……恥ずかしいから、見ないで。ていうか、そういうこと言わないで」「褒めてるんだから、素直に喜べばいいのに」ふっと笑う久我さんの息が、背中に掛かる。彼は一通り、恋人同士が経験するようなことは済ませてしまっているのだろう。……久我さんも、初めて誰かとお風呂に入ったときは、今の私のように緊張したのだろうか。「ありがと。もういい、後は自分で洗うから」なんて可愛くないのだろう。過去に嫉妬したって、避孕丸疑問 もないのに。そんなの、彼を困らせてしまうだけだ。私は手早くシャワーで泡を流し、湯船に体を沈めた。久我さんの家のお風呂は、私の家のお風呂よりだいぶ広い。大人二人で入っても、余裕があるくらいだ。「……久我さんの家のお風呂、広くていいね」「そう?でも確かに、二人で入っても狭くはないね。これからは、毎回一緒に入ろうか」「それ、本気で言ってる?」「まさかこんなこと、本気で言う日が来るなんて思わなかったけどね」そう言って久我さんは、少し照れくさそうに笑った。「全部、初めてなんだよ。こうやって一緒にお風呂に入りたいと思ったのも、独り占めしたいと思ったのも、電話の相手に嫉妬するのも」「電話の相手……?」そこでふと、青柳のことが頭に浮かんだ。久我さんが青柳相手に嫉妬なんて……信じられない。「同期だから親しいのは当然だけど、実際あんな風に電話で話すところを見ると、妬ける」「そ、そうなの……?」「蘭、こっちおいで」「……うん」向かい合わせの体勢でお風呂に入っていたけれど、それも最初の内だけ。おいでと言われた私は、遠慮がちに彼に近付き、体を密着させた。「今だけは、僕のこと以外考えないで」私たちは、抱き合いながら何度も何度も唇を重ねた。頭がクラクラする。お風呂の熱さのせいなのか、それとも情熱的なキスのせいなのか。独占欲を抱いていたのは、私だけじゃなかったんだ。「悔しいけど、私、いつも久我さんのことばっかり考えてるよ」いつも、どんなときも、何をしていても、頭の片隅に彼の存在がある。気が付けば会いたくなっていて、会う度に好きになっていく。「それは嬉しいな」お湯が跳ねる音。舌が絡まる音。互いの吐息。私の喘ぐ声。全てが、普段とは違う。脳内に響き渡り、興奮する。「ねぇ、何か……いつもより凄い……っ」「それは、蘭の方だよ。いつもより、乱れてる」「だって……っ」「もっと乱れていいよ。僕のまだ知らない蘭を見せて」私だって、まだ知らない。身体を触られ、刺激される度に、どこまで乱れてしまうのか。少なくとも、抱かれることを切望する私を知っているのは、久我さんだけだ。結局、繋がった身体は何度も絶頂まで達し、ただお風呂に入るだけの予定が予想外の展開に発展してしまった。心も身体も確かに満たされたけれど、こんな所で乱れてしまった自分を恥じる。「まさかお風呂でヤっちゃうなんて……」「たまには、こういうのもいいだろ?」「……たまには、ね」お風呂から上がり、ベッドの上で二人並んで横になりながら、他愛もない会話をする。

2020年12月 6日 (日)

「七瀬さんがおかしいなら

"  「七瀬さんがおかしいなら、僕もおかしいことになりますね」「え……」「自分のことをおかしいと言ってくる人のために、自分の価値観を曲げる必要はないと思いますよ」「……」「少なくとも、僕は七瀬さんと同意見ですから」久我さんは、私を慰めるように優しく微笑んだ。六年付き合ってきた遥希とは、全く違う。大人の余裕と、落ち着きがある。間違いなく私は、その優しい微笑みと語り口調に癒され始めていた。「僕たち、きっと合いますね」避孕藥後遺症 、どこにもないとわかっている。

全ての考え方や価値観が同じ人なんて、どこにもいない。でも、自分に似ている人はきっといる。私の理想の恋の相手は、どんな人なのだろう。久我さんと食事をしながら、ふとそんなことを考えた。""  六月初旬。久我さんと食事をした日から、二週間が過ぎた。あの日の帰り際、久我さんからの申し出により連絡先を交換した。でも、あの日以来会ってはいない。久我さんが送ってくるメッセージに対し、私が無難な返事を送る。そして甲斐とは、二人きりになると多少の気まずさを感じる関係が続いていた。「結局甲斐とは進展ないわけ?面白くなーい」「勝手に面白がらないでよ。少しも面白い状況じゃないんだから」「ていうか、甲斐も甲斐だよね。何でのんびりしてるんだろ。依織が他の男に狙われてるっていうのに」この日は、蘭と二人で休憩室で昼食を取っていた。普段なら甲斐や青柳も昼休憩に入り合流するけれど、二人とも忙しいのか姿を見せない。「ねぇ、来月温泉行かない?一泊で登別とか」

「いいね、行きたい!」基本インドア派の私だけれど、温泉に行くのは昔から大好きだ。

道内には泉質のいい温泉地が沢山ある。先月蘭と行った定山渓温泉も良いけれど、登別温泉は定山渓以上に人気がある。「じゃあ、甲斐と青柳も誘っておくわ。青柳は奥さんと子供も連れてくるかもね」

てっきり蘭と二人で行くのだと思っていたけれど、甲斐も誘うと聞いて少し胸がざわついた。""  「私は蘭と二人で行きたいかな」「何言ってんのよ。甲斐を誘うことに意味があるんだからね。ちなみに青柳はおまけだから」あくまでも、蘭は私と甲斐の仲が恋愛に発展することを期待しているらしい。

期待に応えられる日はきっと来ないだろうと思いながら、お弁当の唐揚げを口に入れた。「最近の冷凍食品って、本当に美味しいよね。この唐揚げ、昨日スーパーで広告の品だったから買っちゃった」「ふーん。あぁ、そういえば昨日あのイケメンに偶然会ったわ」「あのイケメン?」「ほら、あんたに言い寄ってる久我さん」「え、どこで?」思わず箸の手を止めて聞いたけれど、蘭の表情はなぜか不機嫌そうだ。久我さんと、何かあったのだろうか。「昨日、仕事の後に軽く飲んで帰ろうと思って大通の立ち飲み屋に行ったの」「あぁ、蘭がよく一人で行く店ね」蘭はお酒を飲みたい気分のとき、私や甲斐を誘ってくれるけれど、一人で飲みに行くこともよくある。蘭が一人で飲むときは、いつも大通駅の近くにある立ち飲みの店に決めているらしい。ちなみに私は立ち飲みのスタイルが苦手なため、その店には一度も行ったことがない。"" 私が知らない君の顔"「甲斐……っ、気持ちい……っ」

翌朝、私はもずくの散歩に行きたがる声で目が覚めた

"  翌朝、私はもずくの散歩に行きたがる声で目が覚めた。「んー……もう朝かぁ……」寝室の扉の外からは、扉を爪でカリカリと引っ掻く音が聞こえる。もずくが寝室に入りたがっているのだ。私は起き上がり、部屋の扉を開けるためにベッドから下りようとした。そこでようやく、私の左手が甲斐の手でがっちりホールドされていることに気付く。「……」そうだ。昨夜、私は甲斐と一夜を共にしてしまったのだ。昨夜は欲望のままに抱かれることを望んでしまったけれど、今冷静になると私は最低なことをしてしまったのだと思い知る。遥希と別れてから、ずっと寂しくて欲求不満だった。だから私は、甲斐の優しさに甘えてしまったのだ。甲斐もきっと同情で抱いてくれたに違いない。甲斐を起こさないように絡まった指をほどこうとしたけれど、結局甲斐は目を覚ましてしまった。「……おはよ、七瀬」「お、おはよう……」ほどきかけた指が、また絡まり繋がる。どことなく恋人同士のような甘い空気が流れ始めたことに、私は混乱してしまった。「甲斐、ちょっと……手、離してもらってもいい?」「何で?」そのとき、扉の外にいるもずくがいよいよしびれを切らしたのか、ワンッと大きく吠えた。""  「ほ、ほら、もずくがドア開けてって怒ってるから」朱古力瘤手術っていた甲斐の手をほどき、寝室の扉を開けた。するともずくが猛スピードでベッドの方に突進し、私をスルーして甲斐の胸に飛び込んだ。「うわ、もずく痛いって。何だよお前、寂しかったの?」「クゥーン……」「本当に可愛いな。天使じゃん」普段なら人見知りをするもずくだけれど、甲斐には異常なくらいに懐いている。きっとそれは、甲斐が人にも動物にも分け隔てなく優しい人だからだろう。「そういえばお前、いつももずくの散歩って朝してるんだっけ?」「あ、うん。週3くらいのペースで、一応今日は散歩の日なんだ。いつも家の周りを二十分くらい歩いてるの」「ふーん。じゃあ、今日は俺も一緒に行こうかな」「えっ」「何だよ、ダメなの?」甲斐はベッドに座り、甲斐に寄り添って離れないもずくを撫でながら、いつもの調子で私と言葉を交わす。その様子は驚くほど自然体で、昨夜の出来事が本当は夢だったのではないか……なんて本気で思ってしまいそうになる。でも、夢なんかじゃない。まだ、身体が甲斐の熱を覚えている。""  「何か腹減ったな。朝飯食べてから散歩行く?」「あ……うん、そうだね。じゃあ適当に何か作るかな」「俺も手伝うよ」ダメだ。自然に接してくれるのはありがたいけれど、甲斐に甘えてしまったことはちゃんと謝らないと筋が通らない。このまま何事もなかったように親友に戻れるかもしれない。そんな狡い考えが頭に浮かんだけれど、すぐにかき消した。いつも私の支えになってくれている甲斐に対して、そんな失礼なことはやっぱり出来ない。「お前、朝はパンじゃなくてご飯派だろ。今から米を早炊きで炊けば……」「甲斐、待って」もずくを抱きかかえ、寝室から出ようとする甲斐を呼び止めた。「あの、その、昨日のことなんだけど……」「あぁ、昨日のお前は凄かったよな」「え……」「お前もああいう顔するんだって、驚いた」甲斐の言う『ああいう顔』は、きっとセックスの最中のことを指しているのだろう。昨夜の自分は、確かに思い出したくないくらい乱れてしまっていたと思う。朝から生々しいことを指摘され、全身から一気に汗が噴き出した。「そ、そういう話じゃなくて!あの、昨日は本当に……ごめんなさい!」私はようやく甲斐に頭を下げた。誠意を持って謝らなければ、私の気が済まない。"夜の静寂が、残された私と甲斐を包み込む。甲斐には申し訳ないけれど、今日はこのまま帰ってもらうしかない。一人になって、思いきり泣きたい気分だった。

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